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はるか昔、自然と人類と動物は共存していた。
共存といっても自然界の法則である食うか食われるかの「弱肉強食」の世界。
やがて狼から分岐した犬と人類が歩み寄り、
生活を共にし協力しあって獲物を手にすることになる。
動物たちは獲物を獲りすぎることもなく、
人類は食料を授けてくれる山・海・河などに感謝し、自然界と共存していた。
現在でも世界や日本の先住民の人々は自然への畏敬の念を抱いている。
誰もが大自然の中に身を置くと大いなる山河に神々しさを感じ、
夜空に浮かぶ大宇宙の星々を眺めていると、
あまりにも小さい自分自身の存在に気づき
大自然の中で生かされているという純粋な感情がわきあがる。
しかし今、地球では森林破壊、大気汚染、水質汚染、土壌汚染、地球温暖化
そして動物虐待…と人間のおごりが引き起こした問題が山積みである。
何とかしなくてはと頭では理解していても、あまりにも問題が大きく、
自分ひとりのちからではどうにもならない…と小さな私たちは無力感にうちひしがれる。
人類はいつから、おろかな生物になってしまったのか。
このままでは地球も動物たちも、そして人類にも不幸な未来しかない…
こんなことを考えていたときに
『ハチドリのひとしずく』という話を知った。
南米エクアドルの先住民族に伝わるハチドリの物語だ。
森が燃えていました
森の生きものたちは
われ先にと逃げていきました
でも、クリキンディという名のハチドリだけは
いったりきたり
口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは
火の上に落としていきます
動物たちがそれを見て
「そんなことをして いったい何になるんだ」
といって笑います
クリキンディはこう答えました
「私は、私にできることをしているだけ」
※出典:『ハチドリのひとしずく―いま、私にできること』(辻信一監修、光文社)
ハチドリの努力もむなしく森は焼失してしまうのか、
それともハチドリの勇気がみんなを動かし、
森は守られ、輝く未来へと続くのか…
この心を打たれる物語をたくさんのひとたちに知ってもらいたい。
2010.6〈おとんのひとりごと〉