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〔 ク 〕
〈出会い〉
2003年10月、冷え込みのキツイ夜中にバスとヴィーナの散歩から帰って家に入ろうとしたとき、「チ~~……」何かの鳴き声がおとんの耳をかすめた。「なんか聞こえたで…」。おかんも耳をすますと確かに聞こえる。2人で目をこらして、あっちこっちを探すがわからない。なんの鳴き声やろ?とふと足下の溝を見ると何かがうごめいている。恐る恐る顔を近づけてみると「ひえーーー!!なんじゃこりゃ!巨大な虫か?ねずみの子供か?」さらに近づいて見ると、うっすらと白黒の毛がはえている。「これは猫の赤ちゃんや!!」
猫の知識に乏しい2人は、「どないしょ~?」「どないすんねん?」とうろたえた。このままだと死んでしまう。しかし拾ったところで、どうすればいいのかわからない。もう考えてる時間の有余もない。気がつくと抱き上げていた。とにかく身体をあっためてやろう…。
家の中でよく見ると、へその緒も胎盤もついたまま。母猫がコンクリートの上で産むはずがないし、兄妹猫が見当たらないのも不自然。誰かが生後間もない子猫たちを捨てにいく途中でこの子を落としたものと思われる。
「子猫の育て方」をさんざんネットで探して、夜は3時間おきにミルクをやったり、ウンチをさせたり、昼間も事務所まで連れて行って世話をした。おとんもおかんも不眠不休でフラフラになった。せっかく救ったこの子を死なせるわけにはいかんと必死だった。
今ではそんな恩義も忘れて、元気いっぱいで家族全員にニラミをきかせている。抱っこをすればシャーッと言うし、ブラシをすれば噛みつく。お客さんが来たら姿を隠して愛想が悪い。なんでこんな風に育ってしまったのか。しかし猫の面白さを教えてくれたのはクのおかげ。普段はクールだが猫ジャラシを出すと夢中で遊ぶ。おとんが脱ぎ捨てた靴下をバシバシたたいり、子供の頃は何度もキッチンの濡れたスポンジをくわえて逃げた。取り上げようとすると、自分の獲物は渡さないとばかりに真剣にうなり声をあげる姿は野生そのものだった。
今までたくさんの子猫の面倒を見てくれたので非常に助かっているし感謝もしている。ひょっとしたらク流の恩返しかもしれない。子育て名人(名猫?)のクにはこれからもがんばってもらう。
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